
そこで、『自費出版ガイド:はじめての自費出版』と題してアドバイスを交え、下記にまとめましたので是非ご一読ください。
出版の形態
出版と一口にいっても形態によって、中身が大きく異なります。一般的に大きく分けると次のように区別されます。(出版社によっては下記以外の呼称や独自の出版形態を提案している場合もあります。)
- 自費出版
- 企画出版
- 共同出版
著者が費用を負担して書籍を出版する形態です。個人出版と呼ばれる場合もあります。「自費出版=費用を全て著者が負担する出版」とお考えください。著者自身が執筆から編集・印刷・販売に深く関わり、本を作り上げていくものです。
出版社が費用を全額負担して書籍を出版する形態です。商業出版とも言われます。出版社の企画として、本の製作費は出版社が負担して著者には原稿料(印税)が支払われます。出版社が全リスクを負うため、売上が見込める作品でない限りはほぼ採用されません。有名作家や著名人でない限りは非常にハードルの高い出版形態です。
自費出版と企画出版の中間に位置し、出版社が費用の一部(流通や広告にかかる費用の一部など)を負担して出版する形態です。協力出版とも言われます。製作費用を著者が負担する代わりに、書店流通および宣伝を出版社が行う場合が多いです。書店流通まで考えてる場合は、通常この形態になります。出版社に原稿を持ち寄り、相談しながら判型、部数、価格などを決めて進めていきます。
自費出版の流れ
自費出版本が完成するまでの流れを順に追っていくと同時に、著者の方が「どのような準備をして、どのように本と向き合い、どのような姿勢で出版社とお付き合いするのがいいか」などをご紹介します。
原稿作成
当たり前ですが、まずは原稿を書くことからスタートです。手書きの原稿でもパソコンでデータ化した原稿でも構いません。書き終えたら何度も読み返して納得いくまで手直しして完全なものに仕上げてください。出版社に原稿を渡して作業が始まる前に完全なものにすることが、時間も費用も最小限に抑えられます。極力、編集段階での修正を減らすことが大切です。
【ポイント】
自費出版するなら、ぜひ原稿はパソコンの文章作成ソフト(Microsoft Wordなど)を使うことをお勧めします。文章の修正も楽ですし、誤字脱字のチェック機能もついてます。手書きの原稿でも本は作れますが、結局はデータ化しないとならないためその作業を出版社にお願いすると、その分の費用が発生します。自費出版の費用をなるべく安くするためには必須です。
写真や図表の用意
自費出版する本が文章だけではなく、途中に写真やイラスト、図表などを入れたい場合は原稿と一緒に用意します。デジカメで撮った写真やExcelなどで作成した図表はデータを出版社に渡せば、ほぼ問題ありません。ただし、プリントした写真や手書きのイラストの場合はスキャナーで読み取りデジタルデータにする必要があります。枚数によっては作業分の費用が発生する場合もあります。
【ポイント】
写真は、ピントや露出が適性な綺麗なものにしましょう。挿絵として利用する場合はクロ一色になるので、プリントしてみて問題ない写真であれば、神経質にならなくて大丈夫ですが、本のカバーに写真使う場合は画素数やサイズによっては見た目が荒くなる場合があるのでご注意ください。
見積の依頼
原稿などの準備が一通りできたら次は出版社を探して見積をとることになります。自費出版するための出版社を見つける手段はインターネットで探すのが一番簡単です。検索ワードは「自費出版 本の種類(専門書、小説など)」「自費出版 用途(教科書、論文など)」「出版社 地名」などで検索すれば、出版社がいくつも出てきます。まずは気になる出版社のホームページをいくつか見てみてください。各社とも特長やセールスポイント(格安、丁寧、実績豊富、高品質など)が書いてあります。概算の見積を出してるところがあれば、金額を見比べれば相場が分かってくると思います。
【ポイント】
出版社の多くは善良な会社ですが、自費出版がはじめての場合、見積をしたら、執拗な営業をされないか、最終的に法外な費用を請求されないかなど心配になると思います。もし心配なら「出版社名 評判」「出版社名 口コミ」などで検索してみてください。悪質な出版社は大抵問題を起こしていて、悪い書き込みがされいたり、訴訟問題になっていたりします。書かれていることを全部を鵜呑にするのはよくないですが、判断材料にはなると思います。
もうひとつ重要なのは、単に製作費用が安いのがいい出版社ではありません。出版技術やITの進化に伴い価格は下がる傾向にはありますが、それでも適正価格は存在します。安すぎる場合には何かしら隠れた理由があるはずです。安かろう悪かろうでは意味がありません。満足のいく良い本をつくるには、これから作ろうとしている本のジャンルや分野を得意としている出版社や専門出版社での自費出版をまずは検討してみてください。自費出版した本の書店流通を考えている場合は、販売支援や宣伝をしてくれるかなども選ぶ際のポイントになります。付随サービスや費用の支払期限なども見過ごせません。総合的に判断して、出版社を決めることをお勧めします。
発注
出版社が決まったら、次は契約書を交わします。契約書の内容を十分に確認し、不明点があれば聞くようにしましょう。費用の総額や支払条件はしっかり確認してください。
【ポイント】
契約書は出版社が用意しています。基本的には作成した業者側が有利な内容になっているのが、契約書というもので、それが極めて普通です。余程おかしな内容や不当な記載がない限りは、心配しなくていいと思います。過敏になりすぎて、記載内容の変更を求めて関係が悪くならないようご注意ください。契約書の記載内容を契約者ごとに変えてくれることは、まずしてくれないでしょう。どうしても納得いなかなければ契約しなければいいのです。
編集
表紙のデザインや判型、頁数、レイアウトなどを決めていく工程です。自費出版であれば、まずはどのような本にしたいのか希望を担当者に伝えましょう。
デザイン
・製本の種類
「上製本(ハードカバー)」と「並製本(ソフトカバー)」の二種類があります。上製本はボール紙を芯にした厚紙を巻いた丈夫な作りです。布張りした高級感のあるものも作れるので外観を立派にしたい場合には上製本をお勧めします。並製本は、上製本と比べて簡易な作りで、やわらかい厚紙の表紙を使いコストを抑えられるのがメリットです。
・本のサイズ(判型)
判型は、本の種類によって相応しいサイズが決まってきます。文庫や新書など文字を中心にしたものは小さく、写真集などのように、写真や図版が中心の本は大きいのが一般的です。
判型 | 寸法mm | 本の種類 |
---|---|---|
A4判 | 210×297 | 写真集・絵本・画集など |
B5判 | 182×257 | 週刊誌・雑誌・写真集など |
A5判 | 148×210 | 専門書・学術書・文芸雑誌・教科書など |
B6判 | 128×182 | 一般書籍(小説、自分史、エッセイ)・文芸書 |
四六判 | 188×128 | 一般書籍(小説、自分史、エッセイ)・文芸書 |
A6判 | 105×148 | 文庫本 |
新書判 | 148×105 | 新書本 |
・表紙のデザイン
表紙のタイトルの大きさや書体、写真や絵の配置によって本の印象は変わります。自費出版なら著者の自由に決められる側面もありますが、著者のデザインセンスの有無にも大きく関わるので、こんな感じにしたいというイメージを伝えるか見本を渡して、出版社にベースのデザインはお任せするのがいいと思います。
レイアウト
・文字組み(文字の大きさ、書体、行間など)
これはかなり重要です。読みやすい本になるかどうかに関わります。とは言っても自費出版がはじめてであれば、文字組みのことはわからないと思いますので、本屋さんで、色々な本をみて、見本となる本を1、2冊見つけてください。それを出版社に渡してイメージを伝えればOKです。ただし、本の内容にマッチする文字組みも存在しますので出版社にアドバイスをもらって決めるのがいいと思います。
・写真や図表の配置
どのページのどの位置にどの写真や図表を挿入するのかを決めていきます。印刷した原稿に手書きで構わないので、正確に指定してください。大きさはレイアウトに合わせて出版社側が調整しますので、気にしなくて大丈夫です。
校正
通常は「初校」「再校」「校了」の順に進んでいきます。
「初校」
誤字・脱字がないか、用字用語が統一されてるか、写真などが所定の位置に正しく入っているかなど実際のページ組みの状態になった「校正刷り(ゲラ)」をもとに、著者がチェックして、訂正箇所があれば、分かり易く赤字で訂正内容を記載して担当者に返却します。
「再校」
初校で指示した修正が正しく反映されているかを確認します。さらに訂正があれば再度訂正内容を記載して返却して、「三校」と続きます。多い場合は「四校」」「五校」となる場合もあります。
「校了」
校正完了したことをいいます。この時点で多くの場合は著者に最終チェックをしてもらい「これ以上修正する箇所はない」ことを確認します。そして印刷・製本の工程に移ります。
【ポイント】
校正の際に注意したいのが、いざ印刷目前となると手直ししたくなる気持ちが出てきます。先にも書いたように、この時点で何度も手直ししないように原稿作成の段階で完璧なものに仕上げておくことが大切です。校正時に文字の修正だけでなく、段落を差し替えるなどの大幅な変更があると、当初の見積額から大きく変わることがあります。また本の完成が遅れることにもなるのでご注意ください。
印刷・製本・納品
校了したデータと表紙のデータを印刷所に回して、本が出来上がるのを待つのみです。通常、書籍を作るのに最も適したオフセット印刷という方法で印刷されます。印刷完了後、製本作業になります。印刷された紙(刷本)を断裁して余白などを切り落とします。ここで表紙や帯なども合わせて断裁します。あとはサイズに合わせて二つ折り、三つ折り等に折りたたみ、順序を正しく揃えて綴じて完成です。ページ数や製本仕様などにより異なりますが、約2〜3週間程で印刷・製本が完了して納品されます。
【ポイント】
オフセット印刷は紙とインクとの密着度が高く、絵や写真、文字の細部まで鮮明に表現できるため高品質で綺麗に仕上がります。ただし、オフセット印刷は、部数に関係なく刷版が必要となるため、自費出版で少部数(100〜200部程度)しか作らない場合は割高になります。部数が多いほど1冊あたりの費用は下がります。オンデマンド印刷は、デジタルデータを直接デジタル印刷機に送り込む印刷方式です。オンデマンド印刷のメリットは、一冊単位でスピーディーに製作できる点と製版と刷版の工程がないため、小部数なら低コストでできる点です。逆に部数が多くなるとコストメリットはなくなります。
書店流通
自費出版で、書店での販売を少しでもお考えの方はご一読ください。まずは、出版された本が街の書店に並ぶまでの流通の仕組みをご紹介します。
自費出版の本を流通・販売する場合は、必ず取次会社に書店への配本をお願いする必要があります。つまり取次会社と取引(口座)がある出版社しか書店に流通させることができません。
(1)出版社→(2)取次会社→(3)書店 |
取次会社の二大大手が、日販、トーハンという会社です。大手出版社は、これらの取次会社と契約して全国の書店に配本できるのですが、中小出版社(出版社全体の9割以上)は、これら大手取次会社とは取次契約をしてもらえません。そこで、中小出版社は大手取次会社へ取次してくれる中取次会社(星雲社など)を通して全国の書店に配本してもらいます。ですので自費出版の本の多くは下記の流通ルートで書店に送られています。弊社の場合は中取次会社を通して、書店流通させています。
(1)出版社→(2)中取次会社→(3)取次会社→(4)書店 |
また、自費出版の本を書店に流通させるには、国際標準ISBNに、日本独自の基準である図書分類記号と価格コードを付けた「日本図書コード」と「書籍JANコード」と呼ばれる「日本図書コード」の文字情報を2段のバーコードにしたものを表記、印刷する必要あります。お手元にある本の裏表紙をみてみてください。表記されているがわかると思います。
【ポイント】
書店流通を考えて自費出版を検討されている場合は、書店流通できる出版社なのか(取次会社か中取次会社と取引があるか)を事前に確認してください。また、重要なポイントですが、これら条件が揃っても必ずしも書店に並ぶわけではありません。書店に本が並ぶには、書店が注文してくれるか、取次会社が配本してくれるかのどちらかです。そもそも部数が少ない自費出版の本は一部の書店にか配本されませんし、一定期間売れなければ返本されます。勘違いしていただきたくないのですが、そもそも自費出版本は儲けるための本ではないということです。自分のために価値ある一冊を作る、研究の成果を本にするといった目的・意味を思い出していただければ、書店流通はおまけ程度と考えるべきです。あなたが著名人や有名人ではなく、本で一攫千金を狙うのであれば、自費出版ではなく大手出版社の新人賞やコンテストに応募し、大賞を受賞して出版してもらう以外はまず不可能だといっても過言ではありません。ただし、著名人でなくとも販売するターゲット(NPO法人などの白書や機関紙、大学・予備校・専門学校などのテキストや参考書)が絞れていて製作部数の完売が見込めるならば、出版費用程度は最終的に回収できる場合もあります。
広告・宣伝
自費出版本を出版社が自ら広告費を使って大々的に宣伝してくれるところはまずありません。ただし、自社サイトでの書籍紹介やWEB販売、書籍一覧のような案内チラシに載せてくれる出版社はあります。自費出版する出版社を選ぶ際には、どの程度の宣伝をしているのか、どのような販売支援があるのかも確認しておくといいでしょう。
ここまで読んでいただけると自費出版の流れをご理解いただけたのではないかと思います。これから自費出版をお考えの皆様の参考になったのであれば幸いです。出来上がった本を手にしたときには、それまでの苦労を忘れるほどの感動を覚えると思います。是非、本を作ることを楽しみながら、“価値ある一冊”をこの世に送り出しましょう。弊社スタッフ一同、精一杯ご支援させていただきます。
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