概要
summary
本書は、宿泊特化型ホテル・デザイナーズ旅館・民泊等、様々な業態に多様化しつつある我が国の宿泊施設について、施設コンセプト構築、オペレーション管理、所有と経営の分離等の事業スキーム構築について、主にマーケティングの視点からまとめている。また、国内旅行、訪日外国人、婚礼宴会・コンベンション、民泊、チェーンホテル等の市場動向と供給動向を豊富なデータをもとに整理したうえで、今後のホテル・旅館経営の将来について示唆している。
目次
contents
序章 宿泊施設のビジネスモデルと本書の構成
1章 宿泊施設の経営特性
- 経営の特性と課題
- (1)宿泊施設が提供するサービス
- (2)宿泊施設の経営課題
- 複数サービスの組み合わせによるコンセプト形成
- (1)宿泊をコアとする複数サービスの集合体
- (2)空間利用権と人的サービスの特性
- (3)館内共用空間と街中の空間の関係性構築 ―クローズ戦略とオープン戦略―
- 対象市場とサービス領域の組み合わせによる機能構成
- (1)宿泊旅行客と地元客、宿泊サービスと料飲サービス
- (2)立地により異なる機能構成モデル ―多機能タイプと単機能タイプ―
- (3)立地とサービス領域により異なる競合対象
- (4)街の機能との役割分担・相互補完モデル ―まちづくりとの連動の重要性―
- (5)街全体で宿泊機能を提供する分散型宿泊施設
- 損益と財務の特性
- (1)サービス領域により異なる損益・財務の構造
- (2)収益不動産としての特性
- 品質と業態の特性
- (1)品質を形成する要素とその特性
- (2)業態カテゴリーを表現する要素とその特性
2章 マーケティングに基づくコンセプト構築
- 宿泊旅行市場のマーケティング
- (1)旅行目的により異なる宿泊施設へのニーズ
- (2)同行者数・宿泊日数により異なる宿泊施設へのニーズ
- 団体客・MICE市場のマーケティング
- (1)集客交流産業における宿泊施設のポジション
- (2)団体客・MICE市場の内訳と宿泊施設のターゲット戦略
- (3)団体客・MICE市場の販売と流通への対処
- (4)宿泊施設がターゲットとする市場と成立可能な業態
- エリアマーケティング
- (1)宿泊旅行客市場 (主に客室部門) の立地評価
- (2)地元客市場 (主に料飲部門) の立地評価
- (3)立地条件変化の要因と影響 ―交通体系の変化、地区の環境変化、集積効果―
- ターゲット客層の設定
- (1)需要変動の経営への影響
- (2)季節・曜日によるターゲットミックス
- (3)ターゲットミックスに基づくコンセプト構築
- 生活文化の表現による非日常の魅力創造
- (1)上流階級の生活文化の体験
- (2)自己の個性を表現するライフスタイルの体験
- (3)異文化の体験 ―国・地域固有の生活文化―
- (4)異空間の体験
- (5)非日常の生活文化表現の意義と留意点
- (6)街並みと宿泊施設のコンセプト統一による相乗効果
3章 オペレーション管理
- 商品開発と販売管理
- (1)需要変動に対応した商品開発
- (2)パッケージとアラカルトの使い分け ―バンドリングとアンバンドリング―
- (3)料金体系の使い分け
- (4)商品別の収益管理 ―誘客商品としての食事の魅力向上―
- 予約と流通チャネルの管理
- (1)一次販売 (予約時) と二次販売 (現地) の特性
- (2)収益管理 (レベニューマネジメント)
- 顧客の管理
- (1)宿泊旅行客のリピーター保持戦略
- (2)地元客のリピーター維持戦略
- (3)リピーター維持のための手順と留意点
- 生産性の管理 ―人的資源開発、業務改善、ワークスケジュール管理―
- (1)ホスピタリティ向上のための人的資源開発
- (2)業務改善とワークスケジュール管理
- (3)人件費の需要変動対策
- (4)部門別損益管理
- (5)事業リスクの管理 ―リスクアナリシスによる損益評価―
4章 成長戦略の選択肢
- 宿泊施設経営に求められる資質
- 成長戦略の選択肢
- (1)宿泊旅行客市場における成長
- (2)地元客市場における成長
5章 事業スキームの構築
- 事業スキーム多様化の要因とその形態
- (1)上下分離スキーム ―所有・経営・運営の分離―
- (2)領域別分離スキーム ―宿泊と料飲、運営と販売、接客と後方支援―
- (3)外部委託や提携の可否の判断
- (4)サービスサプライチェーンの形成
- 運営委託とフランチャイズの事業スキーム
- (1)運営委託 (Management contract)
- (2)フランチャイズ (Franchise)
- (3)所有・経営法人から見た運営法人との関係構築
- (4)投資目的の所有法人の特性とプロパティマネジメント会社の役割
- ホテルチェーンの事業スキーム
- (1)ホテルチェーンの強みと弱み
- (2)ホテルチェーンの強みと弱みの変化
- (3)ホテルチェーンの様々な類型とその動向
- 会員制宿泊施設の事業スキーム
- (1)不動産に関する権利形態 ―分譲型 (所有権付与) と預託金型 (利用権付与) ―
- (2)利用に関する権利形態
- (3)購入動機の生成と継続利用動機の維持
- (4)対象となる市場 ―法人市場と個人市場―
- (5)ビジネスモデル構築の留意点
- 公的事業体・半公的事業体の事業スキーム
- (1)公的宿泊施設の変遷と課題
- (2)公設・公営から民営化への移行スキーム
- (3)半公的事業スキーム
6章 宿泊産業の動向と将来
- 市場の動向と将来
- (1)国内宿泊旅行市場の概観
- (2)国内発の国内宿泊観光旅行の動向と将来
- (3)国内発の国内業務旅行の動向と将来
- (4)訪日旅行市場の動向と将来
- (5)宴集会・MICE市場の動向と将来
- 宿泊産業の動向と将来
- (1)宿泊需要と宿泊産業のシェア
- (2)宿泊産業の宿泊需要の動向と将来
- (3)客室供給と稼働率の動向
- (4)稼働率と宿泊単価の動向と将来
- (5)チェーン化の動向
7章 業態別の動向と将来
- 都市に立地する宿泊施設
- (1)多機能、宴会・料飲主体型の宿泊施設 ―シティホテル、コンベンションホテル等―
- (2)宿泊主体型の宿泊施設
- (3)宿泊特化型の宿泊施設
- (4)簡易宿泊施設
- 観光地に立地する宿泊施設
- (1)大規模 (多機能) の宿泊施設
- (2)小規模・高級の宿泊施設
- (3)中規模・中級価格帯の宿泊施設
- (4)大規模~中規模のバジェット旅館
- (5)小規模・低価格・料飲サービス提供の宿泊施設
- (6)ドミトリー形式の宿泊施設 ―ユースホステル、ゲストハウス等―
- (7)宿泊特化型の宿泊施設
- 特異な立地・利用形態・客層の宿泊施設
- 民泊等の分散型宿泊施設
- (1)分散型宿泊施設の動向
- (2)分散型宿泊施設のビジネスモデルとその課題
- (3)分散型宿泊施設の将来
8章 ホテル・旅館のビジネスモデルの将来
- マーケティング課題への対応
- 機能とサービスの方向性
- (1)客室サービス
- (2)料飲サービス
- (3)リラックスサービス
- (4)チェックイン前、チェックアウト後の館外サービスへの進出
- (5)訪日外国人へのホスピタリティ
- (6)ダウンサイジングと館内分割
- AI活用によるオペレーション管理の労働生産性向上
- 地域一体経営と宿泊施設の複数施設経営
- (1)宿泊施設と街の役割分担、相互乗り入れ
- (2)複数の小規模宿泊施設の経営一体化
- オペレーションに特化したリージョナルチェーンの増加
- 余剰不動産・歴史的建造物の用途転換
- テクノロジーの進化とビジネスモデルの将来
- (1)無人宿泊施設の可能性
- (2)館内物流とロボット化の可能性
- (3)自動運転車両、カーシェアリングによる宿泊施設への影響
9章 宿泊産業を取り巻く法制度等の諸課題
- 宿泊産業と社会・経済の関わり
- (1)社会・経済における役割の変化
- (2)産業としての位置づけ
- (3)旅行・観光消費における位置づけ
- 宿泊産業が適用を受ける法律の現状と課題
- (1)旅行者保護から消費者保護……旅館業法、および様々な消費者保護の法律
- (2)治安と風紀の維持
- (3)観光振興のための産業育成
- (4)社会的責任
- (5)改正旅館業法と住宅事業法の概要
10章 参考資料、マーケティングデータ一覧
- コンセプト構築に関する参考資料
- 食事の構成要素と魅力づくりの事例
- 市場動向に関するマーケティングデータ
- 参考文献一覧
- あとがき
著者紹介
introduction
装丁
binding