概要
summary
ヘミングウェイの生きた時代、いわゆるモダニズムの時代は、欧米のみならず、極東に位置する日本と中国にとっても近代化の時代であった。前衛芸術や豊かな生活を求めて日本や中国から世界中に移動していた芸術家や移民たち、および一連の近代戦争を通じて「国家」を模索していた日本と中国が、ヘミングウェイの人生とその文学作品にいかなるインパクトを与えていたのかを実証する試み。
目次
contents
- はじめに
第1章 キューバ資料が語るヘミングウェイと近代日本・中国との交差
- ―ハバナのヘミングウェイ博物館と蔵書研究
- 原体験のなかのアジア
- 二〇代とパリの日本人
- 三〇代と中国への接近
- 四〇代と太平洋戦争
- 五〇代と戦後
- キューバの東洋人たち
第2章 語り手フレデリックの「学び」
- ―『武器よさらば』に見る同盟・共闘と日米確執
- 日本を語る小説主人公
- 「単独講和」と同盟・密約
- イタリア従軍の違和感
- 牧師の教えと戦争責任
- フレデリックのナショナリズムとハワイ
- フレデリックの同盟・キャサリンとの共闘
第3章 大恐慌期のチャイナタウン・スラミング
- ―『持つと持たぬと』に見る貧乏白人の危機的アイデンティティ
- 大恐慌期の中国人移民
- ガルフを渡るチャイナマン
- 英国式中国人
- チャイナタウンとスラミング
- コンクに群がるスラマーたち
第4章 「国際友人」ヘミングウェイ
- ―中国における諜報とプロパガンダ
- 台湾に眠るヘミングウェイの足跡
- ハネムーンとスパイ
- 国民党極秘文書
- 国際友人
- 国際友人ヘミングウェイ
- 中国国民党にとってのV. I. P.
- 訪中後と作家の信条
第5章 戦場へのレクイエム
- ―「原爆ジョーク」と『河を渡って木立の中へ』
- 核の時代
- へミングウェイとヒロシマ
- 『河を渡って』の「原爆ジョーク」
- 戦場のユーモア
- 戦場小説より冷戦小説という選択
第6章 文部省特選映画『老人と海』
- ―戦中戦後の武士道言説を文脈に
- 戦後日本とキューバの老漁師
- 文部省特別選定映画
- 老漁師の変遷
- 「変わった老人」とキューバの日本人漁師たち
- ヘミングウェイと武士道言説
- 焚書に消える武士道言説
- 武士道復活と『老人と海』
第7章 長髪の日本人画家と長髪の画家ニック
- ―「オリジナル・エデンの園」に見る出逢いの再現
- 回想のパリと遺作
- 二つの遺作から削除された二組の夫婦
- 長髪の日本人画家
- 長髪ニック
- 二月末の出逢い
- おわりに
- 付録
- 1.『戦う男たち』序論完訳
- 『戦う男たち』の目次
- 2.『自由な世界のための作品集』序文完訳
- 『自由な世界のための作品集』の目次
- 3.ヘミングウェイ 日本・中国関連年譜
- 4.ヘミングウェイ 訪中旅程一〇六日間の移動記録
- あとがき
- 図版出典一覧
- 参考文献
- 索引
著者紹介
introduction
助成出版
grant
名城大学学術研究支援センターの出版助成金を受けて出版。
装丁
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