続 市之川鉱山物語

続 市之川鉱山物語

編著|田邊一郎
定価3,520円(3,200円+税)
在庫:あり
仕様:A5判上製
ページ数:521
ISBN:978-4-434-31232-8
発行日:2023/06/14
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summary
   

レアメタルであるアンチモン鉱石(輝安鉱)の鉱山として世界一を誇った愛媛県西条市の市之川鉱山にスポットを当て、2016年に刊行した「市之川鉱山物語」の続編。第Ⅰ章:明治時代の市之川鉱山、第Ⅱ章:ネットー引率東京大学実習旅行、第Ⅲ章:坑道の概要、第Ⅳ章:海外に紹介される市之川鉱山からなり、新たに発見された膨大な資料を基に歴史、地質、採鉱のあらゆる角度から鉱山の全貌を露わにしつつ、人々から忘れられ山に戻りゆく鉱山を見つめながら今もなお他の追随を許さない、孤高の鉱山への限りない畏怖と憧憬の念を捧げる感動の書である。

contents
  • 『続 市之川鉱山物語』は未来への輝き(瀬川 大秀)
  • 『続 市之川鉱山物語』の発刊によせて(塩出 崇)
  • 【凡例】
第Ⅰ章 明治時代の市之川鉱山
  • はじめに
  • 1.江戸時代から明治17年;曽我部家を中心とする民坑時代
    1. (1)江戸時代の市之川鉱山と白目鉑
    2. (2)明治初年~明治7年;曽我部家と堀田、河端との共同経営
      1. ⅰ)曽我部家による借区権購入
      2. ⅱ)ゴッドフレーによる「日本坑法」の制定
      3. ⅲ)コワニエの四国鉱山地図
    3. (3)明治8~10年;市之川鉱山の価値が次第に認識される
      1. ⅰ)フレッシュヴィルと長野桂次郎の鉱山視察
      2. ⅱ)河端熊助、ゴッドフレーにアンチモニー製錬法を学ぶ
      3. ⅲ)アンチモニー製品を内国勧業博覧会やパリ万国博覧会に出品
    4. (4)明治11~15年;借区人の乱立と対立時代
      1. ⅰ)相次ぐ借区の申請と「日本の三大難問題」
      2. ⅱ)ネットーに引率された東大生の来山
      3. ⅲ)白目山神社に次々と石造物が寄進される
    5. (5)明治16年;旧藩士族の鉱山投資と借区人の混乱
      1. ⅰ)旧西条藩と旧小松藩の鉱山投資
      2. ⅱ)関 新平の鉱山視察と鉱山官営化への思い
      3. ⅲ)明治16年の鉱区一覧
      4. ⅳ)隠れた借区人の存在
    6. (6)明治17年;民坑禁止と鉱山の官営化断行
      1. ⅰ)曽我部家その他の主だった借区人の稼行禁止
      2. ⅱ)藤田組への全面委託と旧借区人の抵抗運動
      3. ⅲ)県営化で勧業課に再雇用される人々
  • 2.明治18~22年;藤田組稼行時代
    1. (1)明治18年;演説会葬儀事件と反対派の一掃
      1. ⅰ)興風会の演説会葬儀事件とその壊滅
    2. (2)明治19年;藤田組、県より15年の稼行を受託
      1. ⅰ)15年の命約受託と旧借区人への義捐金支給
    3. (3)明治20年;藤田組による市之川鉱山最盛期
      1. ⅰ)明治14~30年の鉱産高の推移
      2. ⅱ)各坑道の様子
      3. ⅲ)労働環境
      4. ⅳ)製錬
      5. ⅴ)標本として輝安鉱販売
      6. ⅵ)白目集落の様子
    4. (4)明治21~22年;民坑移管への準備と藤田組の裁判
      1. ⅰ)白根知事の着任と監督官の民坑移管への調査
      2. ⅱ)白根知事、民坑移管への英断を下す
      3. ⅲ)鉱山受書に署名した59人の旧借区人とその氏名
      4. ⅳ)民坑払い下げのための資金繰りを旧藩主に請願する
      5. ⅴ)藤田組、26万円の賠償金請求裁判を大阪控訴院に起こす
      6. ⅵ)藤田邸網島会議と8万円の解約金獲得
      7. ⅶ)旧借区人への民坑移管の手続き
      8. ⅷ)国安尋常小学校の市之川鉱山遠足
  • 3.明治23~25年;市之川共同鉱山時代
    1. (1)明治23年;前途多難な開業の年。旧借区人の軋轢続
      1. ⅰ)「市之川共同鉱山所」の発足
      2. ⅱ)藤田組、賠償金請求訴訟の取り下げと撤退
      3. ⅲ)鉱石の販売を三井物産から住友に変更する
      4. ⅳ)北浜製錬所建設と特許を巡る春原隅次郎との裁判
      5. ⅴ)相談役として長屋忠明、南 克太郞の招聘
      6. ⅵ)「市之川共同鉱山所組合規則」の制定
      7. ⅶ)明治23年後半の収支の悪化
    2. (2)明治24年;三浦 安への全権委託とその挫折
      1. ⅰ)三浦 安の委任受諾とその条件
      2. ⅱ)4月の坑夫解雇と騒擾事件
      3. ⅲ)代理人の長森敬斐派遣と改革の断行
      4. ⅳ)牧 相信の赴任と精製アンチモニーの本格的な生産
      5. ⅴ)モルフ商会問題
      6. ⅵ)明治24年後半の収支
      7. ⅶ)和田維四郎鉱山局長の来山
    3. (3)明治25年;三浦 安と旧借区人の葛藤
      1. ⅰ)明治25年上半期の収支状況
      2. ⅱ)旧借区人の等級分けによる株の保有数制限
      3. ⅲ)三浦による株主一株あたり200円の供出案
      4. ⅳ)公然化する株譲渡による松山派とハンター一族の台頭
      5. ⅴ)三浦 安の相談役辞任
      6. ⅵ)いわゆる“ハンター問題”の発議
      7. ⅶ)旧西条藩士族の内訌
      8. ⅷ)三浦の残した地域社会への共益金と功労者表彰
  • 4.明治26~35年;市之川鉱山株式会社時代
    1. (1)明治26年;前途多難な株式会社の発足
      1. ⅰ)モルフ問題と反射炉特許訴訟の決着
      2. ⅱ)この頃のアンチモニー価格の推移とイギリス経済
      3. ⅲ)仲田槌三郎による硫化売却策とハンター商会の買入れ
    2. (2)明治27年;日清戦争の勃発とハンター派排斥
      1. ⅰ)ある金満家による10万円の投資
      2. ⅱ)明治27年下半期の収支状況
      3. ⅲ)他鉱山への坑夫の勧誘
    3. (3)明治28年;ハンター派の後退と住友の進出
      1. ⅰ)役員の大幅な交代と広瀬 坦の起用
      2. ⅱ)役員に新しく工学技師を任命
      3. ⅲ)明治28年上半期の収支状況
      4. ⅳ)鹿野鉱山と中国大陸のアンチモニー鉱山の台頭
    4. (4)明治29年;市之川鉱山の暗転と鉱量問題
      1. ⅰ)北浜製錬所の同盟罷業
      2. ⅱ)ハンター派の完全撤退
    5. (5)明治30~34年;市之川鉱山の衰退
      1. ⅰ)鉱山衰退の4つの原因
  • 5.市之川鉱業商会時代
    1. (1)明治35~36年;西条銀行管理と市之川鉱業商会
      1. ⅰ)市之川鉱山株式会社の倒産
      2. ⅱ)市之川鉱業商会の発足
  • 6.市之川鉱業株式会社時代;明治時代最後の輝きとその終焉
    1. (1)明治37~45年;日露戦争の好況とその後の没落
      1. ⅰ)日露戦争とアンチモニー価格の推移
      2. ⅱ)市之川鉱業株式会社の設立
      3. ⅲ)地質調査所(木挽町時代)の鉱物陳列館
      4. ⅳ)市之川鉱業株式会社の倒産
    2. (2)その後の市之川鉱山
  • 7.補遺
    1. (1)主な引用文献の解説
    2. (2)各種地誌、教科書の図絵にみる市之川鉱山の変遷
  • おわりに
第Ⅱ章 ネットー引率東京大学実習旅行
  • はじめに
  • 1.3学生の市之川鉱山報告
    1. (1)河野鯱雄報告 (Report of the Mining Excursion)
    2. (2)渡辺 渡報告 (Report on Mines Metallurgical Works)
    3. (3)岡田一三報告(Ikuno Silver Mine, Tada Silver Mine, Betshi Copper Mine, Ichinokawa Antimony Mine, Takashima Coal Mine)
  • 2.ネットーならびに3学生のプロフィールと巡検の背景
    1. (1)クルト・ネットー (Curt Adolph Netto; 1847~1909)
    2. (2)渡辺 渡、河野鯱雄、岡田一三のプロフィール
      1. ⅰ)渡辺 渡
      2. ⅱ)河野鯱雄
      3. ⅲ)岡田一三
    3. (3)市之川鉱山への行程
  • 3.巡検報告の各種考察
    1. (1)河野鯱雄の市之川鉱山スケッチ考
    2. (2)採掘について
    3. (3)選鉱について
    4. (4)製錬について
      1. ⅰ)旧来の製錬法
      2. ⅱ)巡検時の製錬法
      3. ⅲ)将来の製錬法
    5. (5)改善点
    6. (6)ネットーと「日本鉱山編」
      1. ⅰ)鉱石の産出
      2. ⅱ)鉱石精撰(選鉱)の法
      3. ⅲ)試金術
      4. ⅳ)中央冶金場
    7. (7)ネットーと鉱山地図
    8. (8)ネットーと画才
    9. (9)ナウマンの市之川鉱山調査
  • おわりに
第Ⅲ章 坑道の概要
  • はじめに
  • 1.市之川鉱山の地質と鉱脈について
  • 2.各坑道の概要
    1. (1)旭坑(A)
      1. A1.坑口付近の通洞
      2. A2.縦坑
      3. A3.旭坑の中継地点
      4. A4.旭坑の通洞(A3より東側)
      5. A5.旭坑の通洞(A3より西側)
      6. A6.旭坑の下部坑道
      7. A7.旭坑最大の富鉱帯?
      8. A8.大鋪坑への通路
    2. (2)大鋪坑(O)
      1. O1.大鋪坑(A8の合流点より西側)
      2. O2.大鋪坑(写真A8―6より東側)
    3. (3)汁谷坑(S)
      1. S1.汁谷坑
    4. (4)鰻坑(U)
      1. U1.鰻坑(通洞部分)
      2. U2.鰻坑から旭坑への下降路。
    5. (5)金水坑(K)
      1. K1.金水坑
    6. (6)今村坑(I)
      1. I1.今村坑
      2. I2.東北走り
    7. (7)千荷坑(Se)
      1. Se1.千荷坑(鶴𨫤)
      2. Se2.千荷坑(鶴亀𨫤合流部)
      3. Se3.千荷坑(亀𨫤;槻谷坑方面)
      4. Se4.千荷坑(鶴亀𨫤)
      5. Se5.千荷坑(千荷通洞)
  • おわりに
第Ⅳ章 世界に紹介される市之川鉱山
  • はじめに
    1. (1)Peter Bancroft 氏論文(1988年)
    2. (2)Jörg Liebe 氏論文(2019年)
    3. (3)考察にかえて
  • おわりに
  • Appendix
  • あとがき
  • 市之川鉱山略年表
  • 索引
    1. 事例索引
    2. 人名索引
  • 巻末資料(多田昌司氏作成)
introduction
田邊一郎(たなべ いちろう)

埼玉医科大学特任教授。

※発行時の奥付より
award

第39回 愛媛出版文化賞 部門賞【第1部門(研究・評論)】

binding
市之川鉱山物語

市之川鉱山物語

  • 著|田邊一郎