概要
summary
机上の空論ではなく実学であるがゆえに、犯罪心理学はおもしろくもむずかしい応用科学である。実務家のほとんどが公務員であることも、本邦における犯罪心理学の研究をことさらむずかしくしている。本書では100年以上の歴史に及ぶ「非行臨床と知能テスト」を題材に、計算機統計学を援用したシミュレーションによる方法論を提案する。児童相談所でWechsler式知能テストを受検していた(14歳未満で刑罰法令に触れた)触法少年たちの知能特性を、現代的なCHC理論に基づいてプロファイリングしている。臨床に資する知見を提供すべく、暴力少年、性非行少年、窃盗少年といった罪種ごとの知能プロフィールも分析した。実学である犯罪心理学においてエビデンスの生成は喫緊の課題である。提案されたシミュレーションを参考に、日本の犯罪心理学研究を阻む方法論の壁を打ち破り、公的機関で働くすべての心理専門職が科学者実践家となる未来はきっとおもしろい。
目次
contents
- 巻頭言 (山本恒雄)
- はじめに
Ⅰ章 児童相談所と少年非行
- 少年非行の認知件数
- 非行少年の定義
- 児童相談所の法的根拠
- 触法少年の統計
Ⅱ章 犯罪心理学と知能研究
- 黎明期の家系研究
- 犯罪者の知能特性
- 非行少年の知能特性
- 本邦における研究知見
- 原因論の否定
Ⅲ章 知能理論と知能テスト
- CHC理論
- WISC-IV
Ⅳ章 実務データと分析の方法論行
- 臨床現場の実務データ
- 計算機統計学の援用
- 研究の目的
Ⅴ章 シミュレーション・アプローチ
- 触法少年データ
- IQ範囲の決定
- 統制群の構成
- モンテカルロ・シミュレーション
- 追加補足分析
Ⅵ章 暴力少年の知能プロフィール
- 暴力非行の動向
- 暴力非行の先行研究
- 暴力少年のデータ
- 暴力少年の知能プロフィール
- 暴力少年の追加補足分析
Ⅶ章 性非行少年の知能プロフィール
- 性非行の動向
- 性非行の先行研究
- 性非行少年のデータ
- 性非行少年の知能プロフィール
- 性非行少年の追加補足分析
Ⅷ章 窃盗少年の知能プロフィール
- 窃盗非行の動向
- 窃盗非行の先行研究
- 窃盗少年のデータ
- 窃盗少年の知能プロフィール
- 窃盗少年の追加補足分析
Ⅸ章 総合考察
- 触法少年の知能プロファイリング
- 本研究の方法論
- 研究の限界
- 今後の課題
引用文献
- おわりに
- あとがき (藥師寺順子)
著者・監修者紹介
introduction
装丁
binding