概要
summary
本書では「局部腐食はなぜ起きるのか」をテーマに掲げて局部腐食の発生機構を追究し、明らかにされた発生機構にもとづいて再発防止策を提案する。 1986年、米国のサリー原子力発電所において、蒸気発生器への給水に取り付けられた炭素鋼製エルボに、360°の全周破断(ギロチン破断)が起きた。1996年、米国電力中央研究所 (EPRI) は、この種の減肉は高温水に接する炭素鋼表面の酸化皮膜が高速で溶出して発生したものと考え、これに流れ加速型腐食 (FAC)と名付けた。2004 年に関西電力美浜原子力発電所において上記と同様な事例が発生した。現在、発電用の大型ボイラーの給水には、超純水のpHを12まで上げ、溶存酸素濃度(DO)を極限まで下げたものが用いられている。しかし、それでもなお FAC の発生は抑えられていない。その理由は、pH や DO を上げ下げするのは全面均一腐食の防止対策であり、これに対して FAC は局部腐食によって引き起こされているからである。局部腐食の発生機構は、一般によく知られている全面均一腐食のそれと大きく異なっている。この事実を知らないと、腐食減肉が何時、どこに発生するか予測できず、腐食事故が起きてしまった場合に、適切な再発防止策を立てることが出来ない。
目次
contents
第1章 絵で見る金属の腐食
- 共通の基礎事項
- 全面均一腐食
- 局部腐食
- 腐食の速さを決定する因子
- 面積比効果
第2章 静止水中の局部腐食
- 局部腐食の進展速さ
- 水線腐食
- 異種金属接触腐食
- すき間腐食
第3章 流動水中の局部腐食
- 用語とその定義
- エロージョン‐コロージョンの特徴
- 銅合金に発生するエロージョン‐コロージョンの観察
- 腐食機構を解く四つの鍵
- エロージョン‐コロージョンの発生機構
第4章 温度の影響を受ける局部腐食
- 流れ加速型腐食FACの事例と特徴
- 一般の金属における局部腐食の発生機構
- 炭素鋼の腐食に対する流れの影響
- 炭素鋼の腐食に対する温度の影響
- 温度条件と流動条件の重畳
- FACに対するpHの影響
第5章 金属の腐食と電磁気学
- 理解し難い腐食に関する専門用語
- 平衡電位と電場
- 電場の平衡電位への影響
- 電場が引き起こす局部腐食
第6章 局部腐食の再発防止法
- 格差排除防食法の正当性
- 格差排除防食法に基づく局部腐食の再発防止策
著者紹介
introduction
装丁
binding