概要
summary
職場の従業員平均年齢の高まり、長時間労働をはじめとする労働課題、人手不足、ワーク・エンゲイジメントや従業員エンゲージメントの低い状況……。現在の日本の職場にはこうした問題がある。さらに、社会全般では高齢者の医療、介護に関する2025年問題が言われている。いずれも国民の健康寿命の延伸のために向き合う必要のある内容であり、これらの問題に対処できること、それが健康経営である。健康経営は職場で働く人々の健康と生産性の向上に資するマネジメント手法である。これからの時代は社会の持続可能性のために、その実践がより重要になる。本書は健康経営が職場にもたらす効果を明確にし、それが広く社会に浸透することで日本の未来に良い影響があることを示す健康経営の有効性に一石を投じる著作である。
目次
contents
序章
- 第1節 本書の問題意識
- 第2節 本書のアプローチ
- 第3節 本書の構成
第1章 健康経営とは何か―その概念をつかむ
- 第1節 アメリカにおける源流:「ヘルシー・カンパニー」
- ロバート・ローゼンによるヘルシー・カンパニー概念
- 第2節 日本における源流:「健康経営®」
- 岡田邦夫氏の健康経営論
- 実践研究会の開催
- コラム1
- 第3節 投資対効果を本質とする健康経営
- 健康管理との違い
- 健康経営の効果に関する先行研究
- 第4節 第1章のまとめ
第2章 近年における健康経営の政策的展開と広がりの状況
- 第1節 健康経営の政策的展開
- 政策が加速した2010年代
- コラム2
- 第2節 健康経営の広がりの状況
- 健康経営銘柄の選定および健康経営優良法人認定の仕組み
- 健康経営銘柄の選定および健康経営優良法人の認定状況
- 第3節 現在の課題
- より多くの法人が参加するために必要なこと
- コラム3
- 補論 保険者および自治体による健康経営推進の仕組み
- ☆協会けんぽ広島支部による健康経営推進事例
- ☆広島県による健康経営推進の仕組み
第3章 健康経営の実践が職場で求められる背景
- 第1節 労働課題への対応
- 働き方改革
- 低位の労働生産性
- 長い労働時間
- 病気の治療をしながら働く人への対応
- 働く人のメンタルヘルス
- 第2節 働く人の健康の可視化
- 欠勤(休職)や離職を防ぐことの重要性
- 働く人に能力を発揮してもらうことの重要性
- ワーク・エンゲイジメントと従業員エンゲージメントへの注目の高まり
- 第3節 投資判断材料としての働く人の健康
- CSR経営と働く人の健康
- ESG投資普及の背景
- 人的資本の情報開示への流れ
- コラム4
- 第4節 第3章のまとめ
第4章 健康経営の先進的な実践内容とその効果
- 第1節 既存の健康経営の事例研究をみる
- ☆SCSK株式会社の健康経営の魅力(SCSK株式会社の事例)
- ☆健康経営は健康増進とともに企業価値・ブランド向上につながりうる(サンスター日本法人各社の事例)
- 健康経営の実践内容を研究するにあたっての課題
- 第2節 大規模企業の健康経営の事例
- ☆大阪ガス株式会社の健康経営の実践内容
- ☆花王株式会社の健康経営の実践内容
- 第3節 中小規模企業の健康経営の事例
- ☆株式会社オガワエコノスの健康経営の実践内容
- ☆ベンダ工業株式会社の健康経営の実践内容
- ☆株式会社マエダハウジングの健康経営の実践内容
- 第4節 医療法人および社会福祉法人の健康経営の事例
- ☆特定医療法人財団博愛会の健康経営の実践内容
- ☆社会福祉法人アンダンテの健康経営の実践内容
- 第5節 健康経営が職場にもたらす効果とは
- コラム5
第5章 健康経営のこれから
- 第1節 働く人の幸せを叶えるCSR経営の一環となるために
- WHO憲章による健康の定義
- PERMA指標
- コラム6
- 第2節 健康増進機能を含む人的資源管理へ向けて
- 働く人が健康な状態で能力が発揮できる働き方の実現のために
- 多様な働く人への対応の必要性
- 第3節 仕事と暮らしの充実に向けて
- ワーク・ライフ・バランス
- ワークライフ・インテグレーション
- ワークライフ・インテグレーションの期待効果は侮れない
- コラム7
- 年齢を重ねても働き続けて、社会交流を楽しむために
- 医療や介護に困らないようにするために
終章
- 第1節 本書のまとめ
- 第2節 むすびにかえて
- あとがき
- 初出一覧
- 主要参考文献一覧
- 英語略称一覧
- 図・表一覧
- 索引
著者紹介
introduction
装丁
binding