
概要
summary
アメリカ自然主義文学を代表する作家セオドア・ドライサーは、処女作『シスター・キャリー』で当時の価値観に反した先進的な女性像を描いたとされ、賛否両論を巻き起こした。しかし、ドライサーの執筆した全8作の長編作品の中に描かれる女性たちは、果たして本当に時代の先を行く先進的な女性として描かれているのだろうか。本書では8作品全てを取り上げ、ドライサーの描いた女性像に作家自身が抱いていた理想女性像を探る。資本主義が台頭した20世紀初頭のアメリカ都市社会のなかに生まれたノスタルジアと、社会に創り上げられた女性像の関係性を、アメリカ文学の巨匠、ドライサーの作品を通して読み解く。
目次
contents
- はじめに
- 凡例
第1章 『シスター・キャリー』 ―「断ち切れ」てはいない田舎との絆
- 1.都市小説として読まれる『シスター・キャリー』
- 2.田園小説として読む『シスター・キャリー』
- 3.ドライサーがキャリーに求めた「牧歌」性
- 4.「ゆり椅子」が示す、アメリカン・パストラリズムの不安定性
第2章 『ジェニー・ゲアハート』 ―自然と、女性と、ノスタルジア
- 1.レスターとジェニーに示された「都市」と「牧歌」
- 2.ジェニーの二面性から読む「ノスタルジア」
- ① 失われつつある「牧歌」
- ② それでも未だ理想である「牧歌」
第3章 『資本家』、『巨人』 ―「新しい女性」像への懸念
- 1.三人の女性像の変化に示される「都市」と「牧歌」の関係
- ① リリアン・センプル ―「都市」に適応できない「牧歌」
- ② エイリーン・バトラー ―混在する「都市」と「牧歌」
- ③ ベレニス・フレミング ―ノスタルジアを誘発する「牧歌」
第4章 『天才と呼ばれた男』 ―都市への賛同と牧歌への憧憬
- 1.ユージーンの女性関係から読み取る「都市」と「牧歌」の関係 ―「牧歌」の影響力
- ① 「牧歌」的理想像を示すアンジェラ
- ② スザンヌに示される反因習性
- 2.芸術の描写から読む「都市」と「牧歌」の関係 ―「都市」化の影響力
- ① 「牧歌」と「芸術」の連合関係
- ② 「牧歌・芸術」内にみられる対立
第5章 『アメリカの悲劇』 ―「湖」が物語るアメリカの「パストラル」
- 1.「湖」が示す自然空間の価値変化
- ① ビッグ・ビターン湖が示す「牧歌」の世俗化 ―『ウォールデン』との比較
- ② 娯楽の場としての湖
- 2.「湖」が示すもう一つの現実 ―地方にみられた階層社会
第6章 『禁欲の人』 ―ベレニスに描かれた理想女性像
- 1.ドライサーの女性描写
- 2.結末に描かれた二人の女性像
- ① ベレニス・フレミング
- ② アイリーン・クーパーウッド
第7章 『とりで』 ―満を持しての、「新しい女性」登場
- 1.ソロンと子供たちの対立に示された 「バーンズ家の精神」 対 「時代の精神」
- 2.境界を壊すおばさんの存在
- ① 「別の世界への扉」としての役割
- ② へスターおばさんとは
- 3.結末にまで潜む「時代の精神」
- おわりに
- 初出一覧
- あとがき
- ・引用/参考文献一覧
- ・索引
著者紹介
introduction
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