
概要
summary
童話作家・安房直子(あわ なおこ)の作品を、「五感」という視点から紐解く研究書。
安房直子の童話は、やさしくやわらかでありながら、どこかもの悲しさを併せ持つ。作品に描かれる、いにしえの名称で表現される色彩、風の音、異界の者たちの声、花々の香り、布の手触り、そして味わい深い料理の数々。本書では、こうした五感に訴えかける表現に着目し、それらが作品の中で何を表象しているのかを丁寧に読み解いていく。
さらに、安房が造詣の深かった日本古典文学やキリスト教といった要素が作品とどのように関わり、作家の思想や独自の文学世界を形づくっていったのかについても丹念に分析している。
安房直子が日本女子大学在学中に書いた短編作品によって作家人生をスタートさせた頃、日本の児童文学は新たな潮流の中にあった。そのような時代にあって、時流に乗ることも逆らうこともせず、安房直子は独自の文学スタイルを静かに貫いた。
その静謐な文学世界は、没後30年を経てもなお読み継がれ、色あせることはない。安房直子ファンはもちろん、その作品の魅力をより深く知りたい読者にもおすすめしたい、文学研究としての確かな分析に基づく一冊である。
目次
contents
- はじめに
第一章 安房直子とその周辺
- 1.安房直子の魅力とは
- 2.これまでの安房直子研究
- (1)安房直子作品の出版状況
- (2)これまでの安房直子研究
- 3.ファンタジーとは
- 4.戦後日本児童文学における安房直子の位置付け
- 5.安房直子の生涯
第二章 五感で描くファンタジー
- 1.視覚
- (1)色彩を描く
- (2)「青」から「赤」へ
- (3)対照的な色
- (4)日本古典文学に見られる色
- (5)安房直子が描いた「色」
- 2.聴覚
- (1)「音」を描く
- (2)これまでの『雪窓』の読み
- (3)『雪窓』の音
- (4)『雪窓』の音の新たな可能性
- (5)安房直子が描いた「音」
- 3.味覚
- (1)『雪窓』の味
- (2)「雪」の味
- (3)誘惑する味
- (4)原罪と味
- (5)安房直子が描いた「味」
- 4.嗅覚
- (1)『ハンカチの上の花畑』に描かれる「酒」の香り
- (2)「桜」の香り
- (3)「ばら」の香り
- (4)香りとにおい
- (5)安房直子が描いた「香り」
- 5.触覚
- (1)「触れること」と「穢れること」
- (2)機を織る
- (3)織ることへ込める祈り
- (4)命を繋ぐ
第三章 『さんしょっ子』論
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- (1)『さんしょっ子』の先行研究
- (2)視覚―色彩
- (3)聴覚―わらべ歌
- (4)味覚―小豆とサンショウ
- (5)嗅覚―サンショウの葉
- (6)触覚―サンショウの棘
- (7)安房文学の萌芽
第四章 『ハンカチの上の花畑』論
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- (1)『ハンカチの上の花畑』の先行研究
- (2)つぼの時間
- (3)小人の世界
- (4)拡大していく世界
- (5)昔話と異界
- (6)当世への批判的姿勢
第五章 『花豆の煮えるまで ―小夜の物語―』に見る五感
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- (1)『小夜の物語』ができるまで
- (2)『花豆の煮えるまで―小夜の物語―』の先行研究
- (3)機能としての母喪失
- (4)「山んば」と「山姥」
- (5)いくつもの「母」の物語
第六章 キリスト教と死生観
- 1.安房直子とキリスト教
- (1)聖書研究会
- (2)『目白兒童文学』
- (3)谷口紘子へのインタビュー
- 2.作品に見るキリスト教
- (1)『海の館のひらめ』
- (2)『雪窓』
- 3.安房直子の死生観
- (1)『童話集 白いおうむの森』を境として
- (2)『野ばらの帽子』と『てまり』
- (3)死者の国のイメージ
- (4)『長い灰色のスカート』と『野の音』
- (5)『鶴の家』
- (6)『天の鹿』
- おわりに
- 安房直子略年譜と作品初出
- 参考文献
- 謝辞
著者紹介
introduction
装丁
binding
正誤表
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