概要
summary
本書では、アジア全体ではなく1960年代以後著しく経済発展を遂げたNICsや東南アジア諸国や成長国である中国・インド、韓国さらに一歩先に進んだアジアの唯一先進国日本の国々・地域を意識しながら、それら国・地域の経済成長の特徴、工業化戦略、通貨危機、所得格差、労働市場移行経済に絡んで雇用問題を中心に展開したものである。 アジアは雇用不足を乗り越えられるか、労働需要は派生需要なので、経済成長がなければ雇用創出はできない。しかし、90年代から世界範囲のグローバル化による商品の生産周期の短縮になることにより雇用問題の解決が一層難しくなる。 本書は各種の経済理論を駆使し、社会理解の分析枠組みを持ちながら、現代アジア社会の現実を照らしながら現代アジアの特徴を掴んでいることを目的とする。
目次
contents
- はしがき
第1章 貧困から脱却に成功したアジア社会の脆弱性
- 多様化するアジア
- 開発主義と人口構造との間のギャップ
- アジアへの総合理解と雇用の経済学
第2章 人口構造の転換と雇用不足
- 人口爆発と雇用確保
- 過剰労働力の移動
- 人口政策と雇用問題
第3章 資本主義制度下の所得格差の必然性
- 所得格差とその規定要因
- 雇用格差を背景にした所得格差の世界的拡大
- なぜ所得格差の拡大を防止できなかったのか
第4章 所得分配の平等化の可能性
- クズネッツ仮説回路の回避
- 所得分配と貧困問題の悪化
- 「滴下効果」 と新自由主義の氾濫
第5章 低経済成長時代の雇用問題
- 経済成長と雇用増加
- 「雇用なき成長 」の原因
- アジアの労働市場の硬直性
第6章 アジア諸国における所得格差を規定する要因
- 現代社会の成立と経済成長
- 所得格差問題とは
- グローバル化と所得格差
第7章 所得格差の政治経済学分析
- 国際経済学からみた雇用格差
- 所得格差と政治体制
- アジア的工業化とその試み
第8章 経済成長と雇用増加のメカニズム
- 経済発展による雇用促進
- 工業化開発戦略の雇用効果への懐疑
- ALMPsからみたケインズ経済学の限界性とEUとアジアの挑戦
第9章 二重構造下の労働力移動
- 二重経済論下の経済発展
- 農工間の労働力資源の配置転換
- ルイスモデルの予想と異なる経済発展の可能性
第10章 農業経済の多様化と女性の社会進出
- 教育水準の上昇による労働市場への参入促進
- 小農社会の崩壊と農業部門の経済発展
- 交易条件の不合理性による輸出への影響
第11章 アジア諸国工業化戦略の展開
- 工業化戦略の雇用効果の評価
- 世界各国の工業化の歴史
- タイの輸入代替工業化成功とマレーシアの試み
第12章 アジア労働市場の変容と雇用の流動性
- インド労働市場のサービス化
- 韓国労働市場の非正規化
- アジア労働市場の問題点整理
第13章 低成長時代の世界経済
- 世界経済の鈍化と資源の効率性
- 世界経済の弱体化と新興国経済の減速
- 雇用なき低成長
第14章 世界経済の不確実要素とアジア経済の脆弱性
- グローバル化と経済統合
- アジアの少子高齢化社会
- 世界経済の不確実性の増加
結章として
- 人的資源の活用―ルイスモデルを超えて
- グローバリゼーションによる衝撃
- 混沌化する世界経済と雇用不足の深刻化
- 近代化社会への再挑戦
- 主要参考文献
著者紹介
introduction
装丁
binding